[書評] コーチングの神様が教える「できる人」の法則
最強のビジネス・リーダーになるためには、なにが必要なのか?
「コーチングの神様が教える「できる人」の法則」は、すでに数々の成功を収めつつあるエリート・ビジネスマンを、さらに上のトップ・エグゼクティブへと変えるために必要なアドバイスの極意をまとめた本だ。
著者のマーシャル・ゴールドスミス氏はエグゼクティブ・コーチングを専門とする人物で、ジャック・ウェルチ元GE会長などをはじめ、世界的大企業の経営者80人以上をコーチしたことで知られている。訳者あとがきによればコーチング料は25万ドル。そんなコーチングのプロが会得した極意の中から、私の印象に残った内容を少しだけ紹介したい。
・自分を変えるには?
コーチングとは、個人の能力を可能な限り引き出すための人材開発の方法。中でもゴールドスミス氏がコーチングの対象としている顧客は、すでに世界的大企業で目覚ましい出世を遂げている人物だ。たいていは、CEOなどのトップ・エグゼクティブが、ある人物を自分の後継者として育てたいと思った時にコーチングが始まることになる。
原著のタイトルは「What Got You Here Won’t Get You There」。つまり、あなたがこれまでに遂げてきた数々の成功で得た経験や能力は、これから必要になるものとは違います。だから、変化が必要です!ということ。そして、コーチングで最も困難なことは、過去の成功体験から自信を持っているエリート・ビジネスマンにどうやって変化を受け入れさせるか?という点なのだ。ゴールドスミス氏は、その極意を次のように書いている。
"私の経験では、自分が心から価値を置くものが脅かされて初めて、人は変わろうとする。"
たとえば、現状のあなたは順調に仕事をこなしているから、目先の仕事は成功するだろう。しかし長い目で見れば、あなたは自分のちょっとした悪い癖のせいで将来、家族や仕事を失うかもしれない。そういった問題があるということをきちんと認識すれば、人は変わることができるのだ。
著書の中では、変化させるべき項目としてリーダシップの行動にかかわる20の悪い癖が紹介されている。結論は意外とありきたりだが、具体例に富んでいて参考になる内容が多かった。中でも、私が特に印象に残った具体例を3つ、順番に紹介していこう。
・素直になろう!
ゴールドスミス氏いわく、たとえ大企業の経営者になったって、素直が一番。こんなユニークな体験が挙げられている。
"二八歳のとき、ニューヨークの超高級フレンチ・レストラン《ル・ペリゴール》で一人で食事をしたときのこと。そのようなレストランに私はそれまで行ったことがなかった。ウエイターはタキシードを着込み、近寄りがたいフランス語訛りで話していた。私はウエイターに、正直に告白した。私はこの雰囲気に気おされていること、チップも含めて一〇〇ドルしか食事に使えないこと、手書きのフランス語で書かれたメニューを読めないことを話した。(略)私が自分は田舎者だと認めたら、レストランのスタッフはそれに応えて、私を太陽王ルイ一四世のようにもてなしてくれた。"
・相手の話を聞く!
また、ゴールドスミス氏は、たとえ短い時間であったとしても、対面する相手に全力で注目する行動こそがリーダーに不可欠な能力だと述べている。たとえば、ビル・クリントン氏の次のような行動がお手本だ。
"国家元首であろうが、ベルボーイであろうが、ビル・クリントンは話しかけられているとき、その場にはあなたしか存在しないかのように聞く。彼の目からボディランゲージまですべてのものが、あなたの話に聞き入って身動きできないと伝える。彼は、彼がいかに重要かではなく、あなたがいかに重要かを伝える。"
ある年老いたエグゼクティブも、同様の行動で人望を得ているようだ。
"ロンドンのレストランである年老いたエグゼクティブがいつも世界屈指の美女をともなって食事をしているのを見かけるという。彼は、ハンサムなわけでも異性を惹きつける魅力があるわけでもない。背が低く二重あごで、太りすぎているし、はげていて、年齢は優に七〇歳を超えている。友人は一人の女性に、どうしてこの男に魅力を感じるのかと尋ねた。彼女はこう答えた。「彼はぜったいに私から目をそらさないの。女王様が入ってきても、彼は目をそらさないで、一〇〇%私に注意を向けていると思う。それって抵抗しがたいわ。」"
・本当に大事な物を見失わないこと!
自分の行動を変えようとする時は、その目的が重要だ。目先のノルマを達成しても会社が成長するとは限らないし、たくさんお金を稼いでも家族が幸せになるとは限らない。重要なのは自分のミッションの全体像を常に把握することだ。著書では次のような失敗例が述べられている。
"広い意味で「目的に執着する」ということは、自分の目的達成に夢中になるあまり、さらに大きなミッションを犠牲にしてしまうような行動を指す。人生に何を求めるかを誤解するところからこれは始まる。"
たとえば、今の私だったら「家族や周りの人と楽しい時間を過ごすこと」「新しいものを作って世界の役に立つこと」が大きなミッションだ。たとえ目先のチャンスがあっても、このミッションに反する行動はするべきではないと思う。
みなさんのミッションは何だろうか。ゴールドスミス氏の著書は、自分を見つめ直す良い機会にもなる。
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