
移民に頼るアメリカが、その世界中の才能を惹きつける能力を失う危機に直面している。
テロ対策による移民の制限、教育・研究開発への投資の減少などで、アメリカの成長の鍵となっていた都市の開放性と寛容さが失われつつあるのだ。
「クリエイティブ・クラスの世紀」はアメリカの社会学者、リチャード・フロリダ氏の著作。近年のクリエイティブ・クラスの増加による都市の発展と、その途上における格差の拡大という大きな問題を指摘している。
著者は、アメリカの今までの成長の鍵は多様性にあったと主張する。
アメリカ成長の奇跡の鍵は、たった一つの要因にあった。それは新しいアイデアを受け入れることであり、それが才能を獲得するグローバル競争における覇権を可能にしたのだ。また新しいアイデアの受け入れは、アメリカはもちろん、同時に世界中の人々のクリエイティブな能力を強化することにもつながっていた。
そして、その多様性は近年も、移民によって継続的に維持されてきたようだ。
ハンチントンを含め多くの人が、この第三の移民ブームは技能水準が低く、一部は非合法なヒスパニック系移民の大量の流入であると特徴づけているが、この見方は間違っている。実際、最近の移民は、そのようなものではなく、技能水準の高い労働者たちが大量に含まれている。
アメリカがテロ対策で移民を制限することは、都市の成長を阻むのではないか。著者の危機感が表れている。一方で、単純労働者とクリエイティブ・クラスの境界が格差をもたらすことに対しても警鐘を鳴らしている。
なぜ、格差の拡大が問題なのか、その答えは単純である。格差はクリエイティブ経済にとって機会の浪費を意味するからだ。著しい格差は、実は経済成長を促進するどころか、むしろ抑制するものであることは、多くの研究によって示されている。
この本では移民の減少を危機としているが、移民に頼らず鎖国を続けてきた東京のクリエイティビティの説明がつかない。しかし、著者は日本の労働者が過去に繰り広げてきた総力戦に、希望を見いだしている。
労働者を二つに分けて、少数の人間には革新的な仕事を、残りの大多数には単純作業をさせるのでは、最大限に人材を活用することにはならない。七〇年代に日本から学んだように、再び日本に学ぶべきだ。日本の製造業は「カイゼン」方式を活用し、アメリカのはるか先を行っている。これは、生産現場にいるすべての労働者の知恵を活用しながら、生産工程での小さな改善を継続していくものだ。
最後に、著者が主張する課題を紹介しよう。
クリエイティブ時代に向けた課題
・あらゆる人々のクリエイティブな能力を完全に引き出せること
・クリエイティブな社会資本に投資すること
・大学を才能と寛容の磁石にすること
・クリエイティブ時代に合わせた教育をすること
・都市と競争力との関係を理解すること
・真に開放的で経済的に安全な社会を構築すること
今や、クリエイティブな仕事ができる環境は世界中に増えている。
◇参考
・クリエイティブ・クラスの世紀
(リチャード・フロリダ)